ほぼ全話数ともに、「よく出来ている」。「よく出来ている」という表現には、ほんの少しだけのネガティブな意味合いもあると思うのだが、ここにも当てはまるかもしれない。とはいえ、技術・結構ともに、テレビ放映用ながらこれだけのレベルのものを達成しているのだから、文句は言えない。
なかでも「よく出来ている」と思ったのは──
□07話「Mhz」
絵コンテ/演出:浜崎博嗣 演出助手:平尾隆之 作画監督:朝来昭子
□10話「マロミまどろみ」
絵コンテ:佐藤竜雄 演出:遠藤卓司 作画監督:安藤雅司 山田勝哉
□13話「最終回。」
絵コンテ:今敏 演出:遠藤卓司 作画監督:鈴木美千代 エフェクト作画監督:井上俊之
(もう一度観ると評価は変わるかも。どうして後半が印象に残るので)
「妄想代理人」というタイトルは、内容を予想させすぎるとも言えるし、うまくミスリードしているとも言える。少年バットはともかく、ここではマロミというキャラクターが最大の発明だろうと思う。「なるほど、そう来るか」という最終話も、「見事」に着地している(あえて曖昧にしておく)。
「主人公リレー形式」という趣向なのだが、私の場合はDVDが全巻そろったのを確認し、パッケージの説明なども読んでからレンタルショップで借り始めた。つまり、いったん全体を俯瞰した上で観ているので、リアルタイムで観た場合に感じるであろう展開の妙を、受け取り損ねているかもしれない。
WOWOW、加入していないので…。(そういう人向けの「計算」も欲しい)
で、パッケージという観点から言うと、Vol.4(7話+8話)だ。両極にある2話がカップリングされている。今敏監督(総監督)のKON'STONE内「“妄想”の産物」に各話の使用動画枚数が記されているが、それが象徴的で、7話が最少の3634枚、8話が最多の8893枚──ちなみに各話平均は5364枚だという。
7話は、マッドハウス系(浜崎博嗣)とGONZO系(朝来昭子)が出会った、デジタルアニメの最良の姿だと思う。「動かしても止めても持つように設計されている」ことを今監督は賞賛しているが、その裏付けとして構図と光の処理(デジタルワーク)に細心の配慮が払われていて、とにかく止め(微動)の画面が冴え渡っている。
そして8話──
□08話「明るい家族計画」
絵コンテ/演出:うつのみや理 作画監督:うつのみや理 作画監督協力:井上俊之
原画も記す──
井上俊之 西尾鉄夫 松本憲生 沖浦啓之 黄瀬和哉 本田雄 新井浩一 海谷敏久 荒川直樹 若月愛子 牧原亮太郎 小松田大全 小田剛生 菊地大輔 森岡威 沓名健一 熊膳貴志 丸山友 堀元宣 霜山朋久 ウォンバット(豪華。13話はさらに豪華と言えるが、「ゲスト出演」的な感も)
実はこの8話は最大の「問題作」のようだ。今監督は、「もっともシナリオの出来は良い話数であろう」とした上で、しかし、「出来がもっとも良かったにもかかわらず、シナリオから本篇になる過程でもっとも改変された話数でもある」と断罪している(うつのみやは自身の戯作三昧で「うーーん・・、」と応答)。
どこが抵触したかというと、「(改変による)はっきりとオチが付くような「落とし話」は話の構造が単純すぎる」ことが問題らしい。──のだが、観ている方としては、それが「キズ」だとは全く感じなかった。「虚勢=非生産」というお題を、肯定も否定もしない筆致で絶妙に逸話化した傑作と言っていい。
この「奇妙な味わい」は、体験に値する。
今監督は、「劇場作品は、ゴールを決めてそこに向かって作っていく。自分の中で予定調和になってしまうのを、今回は壊したかった」と語っている。そうした「調和の破壊」からもはみ出た8話があることによって、この連作は外に開かれ、逆説的に予定調和でないものになり得たのではないか(ものは言いよう、だ)。
(このところ忙しく、9月の更新はスローになります)
Recent Comments