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January 08, 2005

鑑賞。 「理由」(劇場)

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理由
2004年 日本
監督:大林宣彦
公開:2004年12月18日

 107人の“等価”な出演者たちによる証言構成スタイルの映像で、上映時間は2時間40分──と聞いて、もつのかと懸念もあった。が、無用の心配だった。想像以上の緊密さ(と適度な弛緩)、想像以上の端正さ(と過度の破調)が同居し、飽きることがなかった。(以下ネタバレ・未見の方は注意)

 だが、言っておく。巨匠然とした風格はない。大林監督のキャリアからすれば、この原作、この映像(物語)構成の発明を使い、破調のない演出で撮り上げることは可能だったはずだ。そうはせずに、インディーズ魂と相変わらずのホラー趣味※1を、近年なかったレベルでブレンドし、昇華させている。
 「また観たい」という禁断症状がかなりの間、持続している。物語に共鳴したというよりも、どうも映像による生理的な操作にはまったらしいのだ。序盤に続く長いクライマックス(展開は原作どおりだ)から、徐々にテンポダウンというつくり方は普通とは逆方向ものかと思うのだが、これが成功している。

 過剰な夕陽、過剰な雨風、過剰な雷光──。事件の舞台となる岸部一徳(管理人)や久本雅美(住人)が登場するマンションの場面の後、はましま学習教室の場面との行き来が始まるあたりの印象が非常に強い。経営者役を演じる赤座美代子が突出した素晴らしさを見せ、場をさらっている。
 この序盤は、黒澤明監督の諸作のイメージを強く喚起する(私の場合、なぜか「野良犬」、それに「八月の狂詩曲」とか)。黒澤組の照明監督、佐野武治※2が招かれているので、そう連想することは間違いではないのだろう※3(マリオ・バーバなども重要かと思われるが、これは語る資格がない)。

 ※1 エンディング曲のテイストは三池崇史監督「牛頭」(死体消失ホラー)みたいだ
 ※2 1960~70年代に大林監督のCMの照明を担当していたという(大林映画は初)
 ※3 メタ構造的なところとそのタイトルから今村昌平監督「人間蒸発」なども連想した

 オシャレ(池上季実子)、ファンタ(大場久美子)、クンフー(神保美喜)…。大林監督の劇場用長編デビュー作として1977年に公開された「HOUSE/ハウス」は、まさに“記号”として象徴化された少女たちが、田舎にある古びた一軒家(に憑いた亡霊※4)の餌食になっていく趣向の映画だった。
 「理由」では、20年後(1996年)の東京の超高層マンションがメインの舞台となる。犯人(理由)探しの過程で分かってくるが、(限りなく亡霊に近い)記号でしかない人々、その人々を食い物にする“家”、その家に棲む亡霊(虚無)──と、「HOUSE」との共通項が多いように思った。

 書き割り(マットペインティング)を額縁にしてファンタジー空間を生み出していた「HOUSE」を反転させるような格好で、“現実”を額縁(窓枠)とした中に、その超高層マンション(デジタルマットペインティングだろう)を象徴的に捕らえたショット(フラワーロード店内)がある。
 ファンタジーの中にリアリティー(=少女たちの肉体と仕草)を見いだそうとする手続き(「HOUSE」以後の大林映画の本流)から、リアリティー(=擬似インタビューに応じるノーメイクの俳優)の中にファンタジーを見いだそうとする手続きにシフトさせる、といったコンセプトか。

 ※4 「理由」では石田直澄(勝野洋)の母役となる南田洋子が演じている

 「理由」が「HOUSE」とは違うのは、事件の夜に○○と○○が名乗り合う刹那、相手が記号ではなく“人間”であるという感情の回復を、確実に描き出していることだ。結果として人々が事件に翻弄される“理由”はそこに発するわけで、この映画の核心となるところだろうと受け取った。
 一方、原作が描こうとしたらしい「近代化のなれの果て(現代)に生まれ落ちた怪物」を、現在にアレンジする試みには苦戦した気配がある。エピローグの趣旨は頭では理解できるのだが、感覚としては咀嚼できなかった(少なくとも私は)。予算不足だったようで、CGもちょっと…。

 クレジット上は等価と言っても、皆がすぐに退場するわけではなく、登場場面の多い中核の人物が複数(各世代に)いる※5。なので、意外とオーソドックスなドラマを観たという感触も残る。各場面の時間配分やテンポを再確認したいところだが、商業映画のスタイルとして非常に興味深い。

 ※5 登場は少ないが、若手新人では「HINOKIO」にも出る多部未華子をチェックだ

(鑑賞:04/12/28 鑑賞動機:大林映画のファンなので)

・参照Blog 2005.01.08記

◇KEYWORD 原作
 akira的はみだしノート 映画「理由」

◇KEYWORD 形式
 勝手に映画紹介!?  理由(2004年)
 FOR BRILLIANT FUTURE 宮部みゆき原作「理由」

◇KEYWORD ラスト
 きょうのかけら 映画『理由』(大林宣彦監督)
 ラムの大通り 『理由』(byえいwithフォーン)

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Comments

どこも映画自体の感想ばかり。
せっかく映画で殺人現場で名のり合うシーンがあるのだから、映画を自分の問題として考えた感想を聞きたかった。
自分が世の中で起こっている事件に無関係だとはとても思えない。
そして、そんな現代人の繋がり方をどう思うのか?
自分が事件に関係しているとわかったとたん、知らぬ存ぜぬを通す自分をどう思うのか?そういう態度がある人をどんなに辛い目に合わせることになるのか、人に殺されないために自分が出来ることは何なのか、人と人との繋がり方をどうしていけばいいのか、あなたからぜひ聞きたいです。

Posted by: まさこ | April 03, 2005 at 10:39 AM

豊かな表現力のある考察で勉強になりました。
「HOUSE」は観たことがないので、今度観て
みたいと思います。

Posted by: とと | January 09, 2005 at 04:17 AM

トラックバックありがとうございます。
『HOUSE・ハウス』を引き合いに出しての映評、
ためになりました。

Posted by: えい | January 08, 2005 at 09:30 AM

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