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February 05, 2005

鑑賞。 「ヴィタール」(劇場)

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ヴィタール VITAL
2004年 日本
監督:塚本晋也
公開:2004/12/11

 有機と無機(≠鉄)の狭間にある肉体との交情、どこでもないどこかに折り畳まれた宇宙・都市・身体・意識(内宇宙)、それら一切合財(コスモス)の関係を取り持つカオティックな水のイメージ──。鉱脈には確かに突き当たっていると思うし、さらに掘り下げてほしいとも期待するのだが、まだ決定打には至っていない、というのが初見の感想だ。

 まず、過去の塚本作品と比較し、エモーショナルな表現が高まりきらないところが気になった。滑り出しは極めて快調だが、終盤に至って弔いの儀式を丁寧に描くあたり、疾走(暴走)力に満ちていたこれまでとは異なる印象を与える。おそらく、解剖実習に立ち会ったことによって、そう描くしかないという心情になったのだとは思うが。
 解剖される人体の見せ方は適度に収めている。個人的な好みを言えば、染みのあるコンクリート壁、爛れたエレベーターの扉といった都市のマテリアリティ(物性)や、膨大な解剖デッサン、科学映像・スライド等々といった素材で、もっと画面を塗り込めても良かったのに、と勝手ながら思った(前半に比較し、後半、ややそうした気配が減じる)。 

 博史(浅野忠信)と父・隆二(串田和美)が対面する(対話しようと努める)場面が、総じてとても良い。ただ、全体のアンサンブルとしては、軸となる3人(浅野、柄本奈美 KIKI)と、その周りを取り巻く5人(岸部一徳、國村隼+木野花、串田+りりィ)とのトーンが乖離しているような気がした。それが狙いのようにも見えず…。
 若手女優2人の起用を冒険した一方で、親世代がはまり役(タイプキャスト)になりすぎてしまっているのではないか。演技力や興行のことを考えれば文句をつけようのないチョイスではあるのだろうが、もっと意外性のある清新なキャスティングで押し切った方が、この作品にはふさわしかったように思うのだが、どうだろうか。

 生と死の境界(逢瀬)のイメージを沖縄(諸島)に求めた映画は過去にも幾つかあったかと思うが(例えば北野武の作品)、そこに広がっているのが琉球的な“たゆたう”ような時間ではなく、激しいダンスの空間──特殊造形や効果を使わずに見事に表現された塚本的フォルマリズム!!──というのは新しいアプローチだ。
 ただ、これも好みの問題だが、この幻覚の中で、博史が涼子(柄本)に溺れていく感情の表現は、もっと強くても良かったのではないだろうか(演出に照れがあるような感も)。
 また、劇中、博史と涼子、博史と郁美の間で何度か繰り返される「ある行為」だが、私にとっては例えば関本郁夫監督の作品(確か「好色元禄(秘)物語」か「大奥浮世風呂」のどちらか)での同様の趣向が、かなり強烈に記憶に焼き付いてしまっているせいか、官能性には欠ける気がした(あの「下劣パワー」をここに持ち込むのはさすがに無理だろうが)。

 「六月の蛇」が素晴らしかったので、相対的にあえてマイナス面を挙げたが、塚本監督は極めて重要な現代作家であると、私は認識している。シナリオを見ると、かなり文学的な表現になっているようでもある。節度があるとはいっても突出していた解剖シーンに気を奪われ、感受すべき何かを見逃しているかもしれない。もう一度観てみたい。

 博史「ねえ、僕の意識って何? これってさ、未来のロボットかなんかのなんじゃないの? 人の意識を持たされたロボットがさ、人間がみんな滅びた後の火星のすみっこで、最後の一台になって、動かなくなる直前に意識と記憶の電気が無茶苦茶出入りを始めたんじゃないの? 今ここにいるのも、涼子と会ってる時間も、未来のロボットの故障が見せてる断末魔の電気信号じゃないの?」(シナリオより)

(鑑賞:05/02/03 鑑賞動機:「六月の蛇」が良かったので)


・参照(補完)Blog
 作品総体でなくPOINTに対する評価を私見で読み取りました 2005.02.06記
 ○:肯定的 ×:否定的 …:どちらとも言えない

◇POINT 塚本ワールド
 ish 『ヴィタール』塚本晋也 (×)
 今日もJokigen 映画「ヴィタール」 (○)
 ★銀河ブログ ■「ヴィタール」塚本晋也の新境地! (○)
 渋谷発!我等 “宝毛団” ■「ヴィタール」正直、楽しめなかった…。 (×)
 The spine 塚本晋也監督 (○)
 B-CALCITE ヴィタール (×)

◇POINT 生と死
 アヌトパンナ・アニルッダ 『ヴィタール』 (○)
 【ぐんま】サウンドスケープ 『ヴィタール』(2004/塚本晋也) (○)
 たわぶろ(たわごとBLOG) ヴィタール (○)
 日々徒然ゆ~だけ ヴィタール[1/14 前夜祭] (○)
 路傍亭 映画:ヴィタール (×)

◇POINT 現実と幻想
 inutile[inytil] ヴィタール (○)
 凪~小説・写真サイト~ ヴィタール (○)
 ぺぺのつぶやき 『ヴィタール』 (○)

◇POINT 愛の形
 absolute Ego dance 今日の優しい時間⇒「ヴィタール」。 (○)
 1ペェジの駄文 ヴィタール (○)
 踊る阿呆に観る阿呆 アミューズCQNで『ヴィタール』 (○)
 さたんご日記 VITAL (○)
 三茶ぶらぶら日記 ヴィタール (○)
 たつし’s くま・シネマ倶楽部 ヴィタール (…)
 覆水盆に返らず 【映画】ヴィタール (○)
 ワニ狩り連絡帳 『ヴィタール』 塚本晋也:監督 @ 新宿 K's cinema (×)

◇POINT 上映時間
 うたかたの日々 ヴィタール (×)
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Comments

初めまして。
私も自分の感想で触れたのですが、親世代の役者さん達と主人公達3人の雰囲気が微妙に違っていたように感じました。
温度差があったのが最後まで気になったのです。
と、感じたのが自分だけじゃなかったとわかりホッとしております(笑)

Posted by: るるる@fab | March 09, 2005 at 07:47 PM

TBどうもありがとうございました。
と、お邪魔してみたら、皆さんがコメントしているように参照情報量が膨大!
すごい。
テキトーにアホウなコト書いてる自分のブログが恥ずかしい…。
とか言いながらTBしてしまいました。
すみません。

Posted by: tomocetomoko | February 10, 2005 at 03:40 PM

はじめまして。
トラバありがとうございます!
みなさんおっしゃってますが、
こういうトラバのされ方は初めてで、
肯定的意見も否定的意見もとりあげていらっしゃるので、
すごく良いなと思いました。

ところでヴィタールに関して。
たぶん塚本監督の作品に対して
私は否定という選択肢をもっていないのかも。
惚れたオトコには無条件なのと同じ感覚?(笑)
今回の作品も、確かに疾走感はありませんでしたが、
静かな強い感情が流れている気がしました。
とにかくもう一度、というかきっと何度も、
観なくてはと思っています。
ではでは。

Posted by: nyao | February 08, 2005 at 02:25 AM

 ゆえひささん、おかやすさん、たつしさん、コメントをいただき、どうもありがとうございます。
 ナルホド~と思いながら、せっかく見て回ったので、自分の中で反すうする意味合いもあって、(少々乱暴ながら)整理させていただきました。
 もちろん網羅的に回っているわけではありませんし、「ここにカテゴライズされちゃったか~」とお思いの方もいるかもしれませんが、そこは平にご容赦いただきたく思います。
 自分と正反対の感想なども読んでいると、「(パッケージになったら)もう一回観てみるか」と思うことしばしばです。

Posted by: re-editor@animatechtonica | February 07, 2005 at 02:17 AM

こんにちは。TBありがとうございます。
自分のブログでは中途半端な感想になってしまったのですが,見応えのある作品には間違いなかったです。僕はまだまだ勉強不足で他の塚本作品を観ていないのですが,素直に観てみたいと思ってます。

Posted by: たつし | February 06, 2005 at 11:05 PM

すごいです。
参照として多くのblogが挙げてあり、その中に僕のものがあることに嬉しさを感じました。プロのものではない(プロでしたらすみません)情報を集め、多面的に映画批評をするというのは、新しい試みだと思います。それがブログの優れたところですね。

現代作家、現代性とは何でしょうね。人間関係の希薄さ、氾濫する情報、色々ありますが、そういったことを考えるためにも、映画はやめられません。

Posted by: おかやす | February 06, 2005 at 03:33 PM

 初めまして,お邪魔します。まずはTB有難うございました。
 上記のように分類されてあるのってちょっと珍しい感じですよね。分類だけじゃなくって,ちゃんとそのブログさん達のご意見を読まれて分けてらっしゃる…ベタづけトラバが多数派の中で,素晴らしいなぁ,と。
 仰る通り『六月の蛇』と比べちゃうと,どうしても見劣り(情念とか劣情とか)するんですけども,前作で既にそういうコトをやっちゃったんで,敢えて入れなかったのかな?とも後でですが,思いました。

Posted by: ゆえひさ | February 06, 2005 at 12:38 PM

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