鑑賞。 「ヴィタール」(劇場)
ヴィタール VITAL
2004年 日本
監督:塚本晋也
公開:2004/12/11
有機と無機(≠鉄)の狭間にある肉体との交情、どこでもないどこかに折り畳まれた宇宙・都市・身体・意識(内宇宙)、それら一切合財(コスモス)の関係を取り持つカオティックな水のイメージ──。鉱脈には確かに突き当たっていると思うし、さらに掘り下げてほしいとも期待するのだが、まだ決定打には至っていない、というのが初見の感想だ。
ヴィタール VITAL
2004年 日本
監督:塚本晋也
公開:2004/12/11
有機と無機(≠鉄)の狭間にある肉体との交情、どこでもないどこかに折り畳まれた宇宙・都市・身体・意識(内宇宙)、それら一切合財(コスモス)の関係を取り持つカオティックな水のイメージ──。鉱脈には確かに突き当たっていると思うし、さらに掘り下げてほしいとも期待するのだが、まだ決定打には至っていない、というのが初見の感想だ。
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犬猫
2004年 日本
監督:井口奈巳
公開:2004/12/04
(2月以降、大阪、名古屋、高崎、岐阜、神戸、岡山で公開の予定だそうです)
犬や猫(の生態)を観察するかのように、登場人物たちのとらえどころのない会話や佇まい、立ち居振る舞いを静かに見詰めている──かのように演出されている。その自然なやり取りを見ているうち、同じ場所に居合わせているような感覚になる瞬間が何度かあった。
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ラブストーリー THE CLASSIC
2003年 韓国
監督:クァク・ジェヨン (兼脚本)
日本公開:2004/01/20 DVD:04/07/16
総合評価 7.0点/10点満点 (「甘い」のが苦手でないなら観ない手はない)
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カンフーハッスル 功夫
2004年 中国+米国
監督:チャウ・シンチー 周星馳(兼製作・脚本・主演)
日本公開:2005/01/01
総合評価 7.5点/10点満点 (意見が分かれそう、サッカーより好きかどうかで)
※以下・長文および余計な事前情報が×な方は回避して下さい
理由
2004年 日本
監督:大林宣彦
公開:2004年12月18日
107人の“等価”な出演者たちによる証言構成スタイルの映像で、上映時間は2時間40分──と聞いて、もつのかと懸念もあった。が、無用の心配だった。想像以上の緊密さ(と適度な弛緩)、想像以上の端正さ(と過度の破調)が同居し、飽きることがなかった。(以下ネタバレ・未見の方は注意)
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ゴジラ ファイナル ウォーズ GODZILLA FINAL WARS
2004年 日本
監督:北村龍平
公開:2004/12/05
北村龍平監督の起用に関しては、東宝の英断だと思う。トップ(富山省吾)が支持しているのだし、“北村ワールド”に染め上げるのも路線としてはOKだろう(「ゴジラ」が永遠に封印されるわけではない、ということが前提だが)。総論では、少なくとも一度観る分には、かなり楽しめるものになっていた。(以下ネタバレ・未見の方は注意)
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ハウルの動く城 HOWL'S MOVING CASTLE
2004年 日本
監督:宮崎駿
公開:2004/11/20
一度観たぐらいでは確かに把握(≠理解)できない。しかし、想像していたよりも、ずっと良かった。「もののけ姫」や「千と千尋の神隠し」よりも好きだという人が少なからずいるようだが、私もその中に入る。もしや、宣伝(しない)手法の術中にはまったのだろうか(なお、私は宮崎駿の信奉者ではない)。
面白いのかと問われると、ちょっと困る。物語的なカタルシスを与えてくれないのは確かだ。と言うか、情報のパズルピースがはまっていく快感を削ぐような超絶技巧を(快感原則を知り尽くした巨匠ゆえ逆に)凝らしているのではと思わせるほどの外しっぷりで、「?」感の中に放り出されたまま終わった。

H [エイチ]
2002年 韓国
監督:イ・ジョンヒョク
DVD:2004/08/27
総合評価 6.0点/10点満点 (ストーリーはB級に近いけれど画づくりに安定感がある)
カルマ 震える記憶 Shiver (心寒)
2003年 中国(香港)
監督:ビリー・チョン
DVD:2004/09/03
総合評価 2.5点/10点満点 (話の先を読ませないのと迷走とは別…)
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ヒロイック・デュオ 英雄捜査線 (雙雄)
2003年 中国(香港)
監督:ベニー・チャン
日本公開:2004/06/19 DVD:2004/10/22
総合評価 4.0点/10点満点 (「敵か見方か、命がけの心理戦。」という程の迫力はなかった)

ツインズ・エフェクト THE TWINS EFFECT (千機変)
2003年 中国(香港)
監督:ダンテ・ラム 共同監督:ドニー・イェン
日本公開:2004/02/28 DVD:2004/08/25
総合評価 5.0点/10点満点 (やや期待外れではあったが、美点はたくさんある)
「なごり雪」(2002年)は、三浦友和(梶村祐作役)のモノローグのためか、「日本殉情伝 おかしなふたり ものくるほしきひとびとの群」(1988年)とセットで私の記憶にとどまりそうだ。大林宣彦監督のフィルモグラフィー中でも、近似した設定のものだと思う。ちなみに、私の中では「日本殉情伝~」は大林映画の一位か二位のポジションにある。
ラストシーンのベンガル(水田健一郎役)に共鳴できるかどうかは、主人公たちと同じ50歳位の年齢になった時の“喪失感”の持ち方にもよるかもしれない。胸に迫るものはあったし、作品のテーマを深く刻むための描き方として見事なものだと認めた上で言うが、当時「日本殉情伝~」で感じた“取り返しのつかなさ”の方が強烈ではあった。
かつての作品の幾つかでは、なぜかバランスを崩すようなオプチカル処理の暴走があって、それが大林映画らしさでもあったが、その点では抑制が効いたものになっている。現在の雪子の様子など“怪奇趣味”も相変わらずなのだが、破調を来たさない程度に収め、むしろ不思議な味わいを与えることに成功している。
個人的には主題歌の「なごり雪」に思い入れがない分、やや距離感が残った(没入を阻まれた)。とはいえ、どこを取っても「大林印」になっていて、過去のいずれかの作品で気に入ったものがある人になら、お薦めできる。同じモチーフをよくもここまで展開できるものだと思うし、かなり磨き上げられたものにもなっている。
堂々たる出来栄えだ。「クロウ/飛翔伝説」や「ダークシティ」のように、何年かおきに観たくなるような気にさせる映画じゃないとは思う。しかし、カルトを撮り続けろというのは酷だろう。得意の黒(闇)基調から白(光)基調に転換した挑み方も含め、念願だったというアシモフの小説の映像化を成功させたアレックス・プロヤス監督の手腕を素直に評価したいところだ。
ハイブリッドジャンル(Sci-Fi+ミステリー+アクション+ドラマ…)の映画で、CGキャラクターを大きくフィーチャーし、スター俳優と共演させるというのは非常にリスキーだ。結果は、好き嫌いは分かれるだろうが、表現として十分に及第点に達している。あくまで“擬人化”なので、「イノセンス」のような“人形”の禍々しさを表現しようとするアニメートには負けているが。
CGキャラクターの功績は、「ロード・オブ・ザ・リング」のウェタ・デジタル(315カット担当)のものかと思えば、サニーの登場場面は、すべてデジタル・ドメイン(535カット担当)が手がけたという(手法はゴラムと同じ)。ローランド・エメリッヒ監督の作品だとピンと来ないパトリック・タトポロスだが、NS-5や近未来のシカゴのデザインは良いと思う。
さて、ヒューマニズムを強調しているように見えるこの映画、表面的な解説とは違った見方をできそうな要素が幾つかある。プロヤス監督の作家(あるいは職人)としての指向性がいまひとつ分からないので検証しにくいのだが、少しばかり妄想モードで戯れてみたい。(以下ネタバレ・未見の方は注意)
ほぼ全話数ともに、「よく出来ている」。「よく出来ている」という表現には、ほんの少しだけのネガティブな意味合いもあると思うのだが、ここにも当てはまるかもしれない。とはいえ、技術・結構ともに、テレビ放映用ながらこれだけのレベルのものを達成しているのだから、文句は言えない。
なかでも「よく出来ている」と思ったのは──
□07話「Mhz」
絵コンテ/演出:浜崎博嗣 演出助手:平尾隆之 作画監督:朝来昭子
□10話「マロミまどろみ」
絵コンテ:佐藤竜雄 演出:遠藤卓司 作画監督:安藤雅司 山田勝哉
□13話「最終回。」
絵コンテ:今敏 演出:遠藤卓司 作画監督:鈴木美千代 エフェクト作画監督:井上俊之
(もう一度観ると評価は変わるかも。どうして後半が印象に残るので)
「妄想代理人」というタイトルは、内容を予想させすぎるとも言えるし、うまくミスリードしているとも言える。少年バットはともかく、ここではマロミというキャラクターが最大の発明だろうと思う。「なるほど、そう来るか」という最終話も、「見事」に着地している(あえて曖昧にしておく)。
「主人公リレー形式」という趣向なのだが、私の場合はDVDが全巻そろったのを確認し、パッケージの説明なども読んでからレンタルショップで借り始めた。つまり、いったん全体を俯瞰した上で観ているので、リアルタイムで観た場合に感じるであろう展開の妙を、受け取り損ねているかもしれない。
WOWOW、加入していないので…。(そういう人向けの「計算」も欲しい)
で、パッケージという観点から言うと、Vol.4(7話+8話)だ。両極にある2話がカップリングされている。今敏監督(総監督)のKON'STONE内「“妄想”の産物」に各話の使用動画枚数が記されているが、それが象徴的で、7話が最少の3634枚、8話が最多の8893枚──ちなみに各話平均は5364枚だという。
7話は、マッドハウス系(浜崎博嗣)とGONZO系(朝来昭子)が出会った、デジタルアニメの最良の姿だと思う。「動かしても止めても持つように設計されている」ことを今監督は賞賛しているが、その裏付けとして構図と光の処理(デジタルワーク)に細心の配慮が払われていて、とにかく止め(微動)の画面が冴え渡っている。
そして8話──
□08話「明るい家族計画」
絵コンテ/演出:うつのみや理 作画監督:うつのみや理 作画監督協力:井上俊之
原画も記す──
井上俊之 西尾鉄夫 松本憲生 沖浦啓之 黄瀬和哉 本田雄 新井浩一 海谷敏久 荒川直樹 若月愛子 牧原亮太郎 小松田大全 小田剛生 菊地大輔 森岡威 沓名健一 熊膳貴志 丸山友 堀元宣 霜山朋久 ウォンバット(豪華。13話はさらに豪華と言えるが、「ゲスト出演」的な感も)
実はこの8話は最大の「問題作」のようだ。今監督は、「もっともシナリオの出来は良い話数であろう」とした上で、しかし、「出来がもっとも良かったにもかかわらず、シナリオから本篇になる過程でもっとも改変された話数でもある」と断罪している(うつのみやは自身の戯作三昧で「うーーん・・、」と応答)。
どこが抵触したかというと、「(改変による)はっきりとオチが付くような「落とし話」は話の構造が単純すぎる」ことが問題らしい。──のだが、観ている方としては、それが「キズ」だとは全く感じなかった。「虚勢=非生産」というお題を、肯定も否定もしない筆致で絶妙に逸話化した傑作と言っていい。
この「奇妙な味わい」は、体験に値する。
今監督は、「劇場作品は、ゴールを決めてそこに向かって作っていく。自分の中で予定調和になってしまうのを、今回は壊したかった」と語っている。そうした「調和の破壊」からもはみ出た8話があることによって、この連作は外に開かれ、逆説的に予定調和でないものになり得たのではないか(ものは言いよう、だ)。
(このところ忙しく、9月の更新はスローになります)
クライマックスは大画面で観たい(私の観たシネコンでも不十分なくらいだ)。テンションを途切れさせずにアクションが積み重なり、しかも画は歪んで傾いてあっという間に流れていくのだが、そこで「何が起こっているのか」を視覚的に完璧に理解させてくれる。
「2001年宇宙の旅」を連想した人もいるようで、それは肯けるが、しかし、あちら(スターゲートコリドー)が抽象の洪水なら、こちらは具体の洪水だ。その視認性の高さ(画力の確かさ)ゆえに、必死に足掻く西たちを応援する心情が、後退せずに高まるのだ。
冒頭、のっけから「こんな画が観たかった」というカットで始まるのが嬉しい。いわゆる「アートアニメーション」(の観客に)であれば普通に受け入れられるだろう手法(マテリアル処理など)を、随所に思い切って援用しているのが特徴だ。
湯浅政明監督は、作画監督と演出を担当した「ねこぢる草」(必見!!)で試みた「マイナーなこと」をこの作品で拡張したと語っているが、それは商業アニメとアートアニメの間に横たわる溝を埋めようという試み、と言っていいのではないか。
3DCGの混入が想像以上に多かった(CGI監督はスタジオ4℃の笹川恵介)。「スチームボーイ」では全体の統制が効いている分だけ違和感がだいぶ残って、「手書き+3D」はいまだ過渡期の手法なのだと実感した(気にならないという人も多いのだろうが)。
しかし、こちらは統制をあえて捨てることを指向して(湯浅監督が言うところの「いい加減」+コラージュ感覚)、処理も的確なので、個人的にはほぼ違和感なしだった(見た目という意味では当然なく、世界観もしくは演出の狙い上のマッチング、という意味において)。
クジラの腹の中のシーンは、北野武監督「菊次郎の夏」や金子文紀監督「木更津キャッツアイ 日本シリーズ」の後半、無為に流れる幸福な(しかし死と通底している)時間を思い出しながら観た(後者は、みょんが酒井若菜っぽかったゆえの連想かも)。
神様に会うくだりや、湯浅監督が「走馬燈」と表現する終幕(+冒頭)を飾る“圧縮大河”映像も圧巻で、とにかく圧巻尽くしなのだが、それら臨死のビジョンと圧倒的にポジティブな生のビジョンとがぴったりと貼り合わされて出来ている稀有な傑作だと思う。
映画の中で起こる“偶然”に対し、ご都合主義と言ってしまうのは簡単だ。しかし、つくり手は(優れたつくり手であるなら)、そう指摘されるのは百も承知で仕掛けているはずなのだ。むしろ看過できない偶然こそが、映画を読み解くための“サイン(手がかり)”になっている、と考えてはどうだろうか。
以下、観ている最中では追いつかず、観終わってから考えてみたことも含んでいるが、まあこんな楽しみ方もあるという妄想&戯言ということで──。(ネタバレ・未見の方は注意)
世にも奇妙な物語 '01秋の特別編「ママ新発売!」が絶品だった中島哲也監督の新作「下妻物語」。TVの中篇やCMのようなテンションを劇場用の長編で貫くのはさすがに無理なわけで、映像的に趣向を凝らしつつも、演出面では主役2人の交流の場面に力を傾けている。そこがとてもいい感じ。特にイチゴ役の土屋アンナが好演し、あとは中島演出にかなりマッチしていたのが桃子(深田恭子)の母親役、篠原涼子だ。全体に快調なテンポで進み、漫画チックな(デフォルメされた演技などの)部分に抵抗を感じない人なら十分に楽しめるはずだ。
映像も女の子(ファッション)も皆が「ゴシック」になびく中で、あえて「ロココ」というところが面白いのだと思う(桃子の持つ批評意識、という意味でも)。桃子=ゴスロリ、と理解している人が多いようだが、それは誤り。Exciteのニュース「「下妻物語」、深キョンロリータの世界を求めて」(5月28日付)でも、BABY,THE STARS SHINE BRIGHT(映画にも登場する実在のショップ)のスタッフが、「全く違います。一般的には甘ロリ、白ロリと呼ばれていて、お姫様やお人形さんを目指すコンセプトなんですよ」とコメントしている(ただ、深田恭子は、ゴスロリの方が絶対、似合うと思う)。
それから劇中にデジタルアニメ(ならではのカメラワークがあるので、あえてそう呼ぶ)が挿入される。森本晃司や田中達之に大きな影響を与えたとされる西村祥示郎がディレクターを務めている。制作はスタジオ4℃で申し分ないレベルだが、どうせなら“ロココ調”のテイスト(美術)あふれるアニメも少し見てみたかった(最後に転調が一瞬あるが)。なお、業界内で注目されていたという西村がフリーで活動を始めた経緯などは、季刊エス第5号の森本との対談中で語られている。夏公開予定の湯浅政明監督「マインド・ゲーム」にも参加しているようだ。
参考文献:「季刊エス第5号・アネモネ2004年1月号増刊」2004年1月1日発行(飛鳥新社)
デートムービーという狙いからは外れしまっていると思うのだが、どうだろうか。設定は全く異なるが、見かけ上のノリとしては東映の「戦隊レンジャーもの」(や平成版「仮面ライダー」シリーズ)に近い。特撮研究所をはじめ、特撮や視覚効果のスタッフも、かなり重複しているし。及川光博や片桐はいりが怪人(敵キャラ)を演じる映画に普通は、カップルを動員する力があるという読みは立てにくいのではないか…。
「孤独」を扱うという点は興味深いし、脚本上も工夫の跡があることは分かるのだが、エンタテインメントとして効率的に楽しませる域には達していない。演出の問題かもしれないが、秋夏子(市川実日子)の内面に生じる変化を軸に描いていけば、爽やかさのようなものが出せたのではないか(ハニーは、フラットなボケキャラのままでいいので)。夏子が眼鏡を外す下りが結構印象的なので、その辺りをうまく活用できればと…。
登場人物がポップに振る舞うところよりも、コバルト・クローとの死闘時にハニー(佐藤江梨子)が機能不全(カラータイマー!)に陥る下りなど、追い詰められた状況の演出の方にやはり、庵野秀明監督の資質が出ていると感じた。OL姿の場面などはちょっと「…」な感なのだが、変身後になるとサトエリは大健闘。そこは想像していたより良かった。特に立ち姿が決まっている。個人的に、この映画の最大の美徳と感じた部分ではある。
この題材、テレビ番組の連続ものであの手この手で繰り出すうちに、ドライブがかかって途轍もなく幸福感のある回が出現する類のものではないか。「戦隊レンジャーもの」の近年の充実ぶりからも、そう言っていい気がする。90分ではキャラクターを醸成する余裕がなく、代わりにキャラクター性の強い役者を起用しているわけだが、敵役で良かったのは新谷真弓ぐらい。あとは予測内の(ありがちな)配役で物足りない。
ハニメーションには、「誰も見たことがない映像」とまでは高揚することができなかった。こちらが“すれっからし”だからか。それとも予告編で観た以上でも以下でもなかったからか。劇場パンフレットでは「新感覚映像、名づけてハニメーション」と強調されているが、実写とアニメーションの融合というところを過大に(無邪気に)煽りすぎている感がある。監督自身は、技術を前面に出す気はないようで、それは正解だろう。
との前提でもう少し踏み込むと、「生(なま)」を強調しているにしては仕上がりの質感に不満が残る。ここは、ハニーのポーズを銀塩(スチール)で撮影し、最良のプリントに焼いたものを(切ったり貼ったりで)素材に使い、アナログの撮影台(マルチプレーンカメラ)で対応できる効果処理だけで動画にする──といった手続きのものを観たいところだが…まあ、時間のかけ方として許されないことなのだろう。
デジタルを介在させるかさせないかは将来的には精神論に過ぎなくなるかもしれないが、現実の制約の中で出来るものについては、まだ“デジタル感”が邪魔になる場合がある。それに、「ダブル(代役)を使って顔だけ貼り替えればいいじゃないか」とか、「ポーズ(体)自体をデジタル加工でつくればいいじゃないか」という突っ込みに対して、この画のままでは答えられないと思う(というか、その方向に進むと考えればいいだけか)。
あとは使う場所(場面)の配置だろう。お約束のミサイルサーカスも含めてバトルアクションという収まるべきところに収まっていたが、カレカノで作画が突如転調たような感じで、日常とつながる個所に使っても楽しかったのではないか。例えば、佐藤で2回ほど見せておいた上で、終幕近くで市川もハニメーションで暴れさせたりすると意外性もあるし、効果的だったように思うのだが。
おそらく、ベースとなる映像や物語のトーンとの連続のさせ方、逆に際立たせ方のバランスが相当に計算されていないと快楽物質は出てくれない。…ああ、でも庵野監督ってそこに最も通じている演出家なわけだから、脳みそいじりは避けたと受け取るべきなのか…。「流星課長」よりは当然、格段に進化しているが、庵野監督はどうやらこの手法に執着しない気配だ。さらに発展させたものを観てはみたいが。
賛否両論の紀里谷和明監督「CASSHERN(キャシャーン)」、私は楽しんだ(娯楽性が高いとは言わないが)。亡霊となったヒーローによる冥府巡り、今際(いまわ)の際に見る楽園、そして胡蝶の夢──といった素直に反応できるイメージ要素が多かったのが理由か。
それらのイメージの紡ぎ方に独りよがりなところがあるのは確かで、終盤では結局破綻しているので、訴える力が収束しなかったうらみは残る(ゆえに「何が言いたいのか」と観客に言わせるのは仕方ない)。しかし、直截なメッセージを込めようという姿勢を含めて、好感を持てるところが多かった。
ストーリーについては、果たして構築しようという意志がどの程度働いていたのか、あるいは殆んど感覚に任せられたのかが知りたいところだ。後者しかないという声も聞こえてきそうだが、では共同脚本に迎えられた菅正太郎、佐藤大という興味深い人選は、どう機能したのか(しなかったのか)。
総計3000カット、合成2500カット、マットペインティング使用600カット、CG使用500カットという概算だそうだ。劇場用映画「Under World」(シナジー幾何学)が結果的に封印されてしまった庄野晴彦(ウィル)が、CGスーパーバイザー(兼コンセプチャルデザイン)として存分に腕を振るっているのが感慨深い。庄野によるメカ設定(デザイン)は、「押井守+竹内敦志」組と比較すれば理を欠いたもののように見える。そこにアレルギー反応を起こす人も多そうだ。しかし、あくまでクールな「イノセンス」にはなかった勢いを感じた。
新造人間の一対一のバトルはうまく行っていない。「キレイな殺陣じゃなくて、必死でいいから」という演出だったそうだが、にしても分かりにくい。見慣れたソードアクションやカンフーアクションにする気はなかっただろうし、やはり作画アニメーションの援用がベストのはずなのだが、加工処理を前提としたアクション映像としては追求し切れていないと感じた。洋画でも「マトリックス」「ブレイド2」など達成度の高いものはわずかだと思うので、邦画でのテクニック開発に期待したいところだ(ハニメーションはどうなのか)。
アニメ・特撮魂という意味では、樋口真嗣がバトルシーンコンテを手がけたシークエンスがやはり白眉だ。ただ、ないものねだりを承知で言えば、中島哲也監督「NTT東日本 SMAP GATCHAMAN 実写CM」(絵コンテ:スタジオ4℃、3DCG:ルーデンス、ポストプロダクション:オニムバスジャパン、3Dマットペインティング:SpFXスタジオ)ぐらいの映像品質で見てみたかった。この種のパートにオムニバスジャパン級のプロダクションがタッチすれば安心なのだろうが、だと6億円に収まらないかあ。
紀里谷監督のフェイバリットの一つがチェコアニメだというインタビューを読んだ記憶があるが、それは言葉を使えないアクボーンの夢の場面に反映されている。伊藤有壱率いるI.TOONの仕事(クレイアニメ)で、この映画の「切なさ」感を牽引する個所ではないかと思う。
予算やスケジュールの制約などから考えても、センスを貫けたかというとそうではないのだろう。とはいえ長編初監督で、しかも(関係者が)仕上がりをイメージしにくい合成主体の映画で一定のトーンを保ち、ここまでまとめ上げている力は認められていいのではないか。
参考文献:「日経キャラクターズ」2004年5月号(日経BP社)
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